このスケッチを基に実際の設計に入っていったのですが、そのプロセスはここで詳しくは触れません。しかし、予想通りというか、Yさんのモノへのこだわりは要望の中に遺憾なく発揮され、私たちをある意味で感心させ、苦しめたのでした。しかしそれは、実際の設計に入る前の段階、つまりスケッチを重ねていく段階と比べると、誤解を恐れずに言うと大したことではありません。M3という愛車のためのガレージ、そしてその愛車を常に眺めることのできる居間、その関係性を間違って読んでしまっていたら、この住まいは成り立たなかったような気がしています。
例えば、大きな居間の一角をガラスで区切ってガレージにした住まいを、最近の住宅雑誌などで時々見かけますが、もし私たちがYさんの表面の言葉のみからそのような空間を提案していたら、たぶんまとまっていなかったでしょう。ご主人さんは、実際には奥様への配慮や、こどもさんへの想い、生活イメージや他の趣味のことなど、常にバランス感覚を持って考えられていたからです。そこの微妙なニュアンスを、何とか(最低限だったかも知れませんが)読むことができたから、この住まいを実現することができたのではないでしょうか。
もちろん、実際のY邸には、設計のプロセスの中でYさんがこだわられたモノたちがちりばめられて、これから始まるご家族の生活を待っています。このような機会を与えていただいたYさんご一家に感謝しつつ、末永く、この住まいが変化しつつも、Yさんご一家の生活の場として輝き続けることを祈りたいと思います。
(設計担当:本田圭一) |