一般の方が自分の家の設計を考えるとき、はじめから全体の構想をまとめるのはたいへんです。また、全体として家を考えようとすると、ある限られたパターンに陥りやすい傾向にあります。いわゆるどこかの雑誌とか、広告で見た間取りや、見学に行った展示住宅の枠をなかなか出られないのです。でもそれは無理もありません。住宅を、部分と全体を考えながらバランスよく設計できれば、専門家として十分通用しますから。
それで、逆に細部のことなら分かりやすいのではと、いろんなパーツを捜したり選んだりするわけですが、これもなかなか難問です。住宅を構成する部材や仕上材料はとてもたくさんあります。そしてそれぞれが個性を主張していますから、それなりに魅力的。とくに新しいものはそうで、各社、各メーカーがしのぎを削っていますから、目移りしないほうがおかしいくらいです。
住宅に使われる新製品というものは、長年その栄枯盛衰と付き合ってみると「みんな似たようなモノだな」と分かるようになります。専門家にはそういう一種の免疫のようなものがありますから、一見変わった新製品を見てもあまり驚きません。しかし、一般の方は違うでしょう。建築材料はいまや日本国中といわず、世界中から取り寄せることが可能な時代ですから、選択肢は無限にあると思われているのではないでしょうか。でも無限の中からひとつを選ぶのは実にタイヘンです。
では一般の人が住宅を設計をする場合、どう考え、進めていったらいいのか。
たとえば食堂(ダイニング)を設計する場合に、こういうアプローチはどうでしょうか。
まず、テーブルを決めます。どのくらいの大きさがあれば家族が楽しく不自由なく食事ができるか。材質や形、重さ、色などはどんなものがいいか、慎重に検討します。もしかすると家具は家より寿命が長いもの。家族が使い続け、思い入れを持てるようなものが望ましいので、安物買いは避けたいですよね。
つぎに、そのテーブルを中心に据えて、椅子の余裕はどのくらいほしいか、配膳のスペースはどのくらいいるか、食器棚や収納の位置や面積はどのくらい必要か、観葉植物を置く棚もいる等々・・・で部屋の広さや周りのしつらえを決めていきます。
また、台所との位置関係はどういうのが好ましいか、居間や庭とのつながりはどうなったほうがいいか、なども考えておきましょう。それから、朝食の時はどんな窓からどんな光が入ってきて欲しいか、夕食の時は食卓がどんな灯りで照らされたいのか、休日の昼餐のときは・・・なども考慮する必要があります。
そしてこれらの結果、食堂(ダイニング)の広さや配置、仕上げ、雰囲気がまとまっていくわけですね。
どうでしょうか。とりあえず8帖分の大きさの洋室をつくり、そこに手持ちの棚や物を持ち込み、その残りのスペースに合うダイニングテーブルと椅子を詰め込み、狭い、使いにくい、雰囲気悪い、あ〜あいやだこんな部屋、というパターンとはずいぶん違うと思われませんか。
このように、自分の行動や意識をひとつの家具から発想していくというのも、生活を重視しながら家をつくっていく方法の一つです。そしてこれは食卓にかぎらず、書斎の机や居間の椅子、茶の間の卓袱台などでも当然いえることですね。つまりひとつのキーとなる家具からその部屋や空間がつくり出される。それらがうまく組合わさって一つの住宅ができるというわけです。
さて、みなさんには生活の基本となるような、家族が一緒に使う、あるいは個人個人が別々に使う家具がありますか?
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