「はじめに」
ここでは暮らしと住まいについて皆さんが関心を持たれるであろうテーマについて思いつくまま書いてみようと考えています。クライアントにとって「本当に役にたつこと」「知りたいこと」は何か。皆さんが「よかった」「参考になった」と言ってくれる内容はどういうものか。それを考えながら掲載していきます。ご期待にそえるかどうかわかりませんが、とりあえず下記のようなテーマを予定しています。
・“設計料”の話(シリーズ)
・家づくりってほんとはプレッシャーとストレスですよね
・住まいの「不満、不安」vs「夢、希望」
・せっかく家をつくるんだからこんなことしたくありませんか?
・エコとエゴ、ここはひとつ地球のために
・いい家って何なのか大工さんに聞いてみよう
・コストダウンのからくり教えます
・役に立つモデル住宅見学やお宅拝見のコツ
・紹介したい家づくりのプロ達
・住宅診断の実例をご紹介します
・家づくり名言の知恵、迷言からのヒント
・気楽に見えて参考になる住宅のご紹介
■“設計料”の話(その1)
建築設計の仕事をはじめて20年以上になります。ふた昔まえから設計の仕事をし設計料をいただいてきたわけですが、いまだに設計料の適正な価格はいくらなのかよくわかりません。
建築の設計料は、設計をする人やモノによってまちまちで、その都度おのおのの設計者がきめている、というと、きっと驚かれるでしょう。しかし、正直これが実情なのです。同じようなものが、同じように設計されていながら、設計料というのは個々にぜんぜん違う。これはなにも赤ひげ先生のような設計者がいて、設計料をタダにしてしまうとか、芸術家のような人が名声などによって報酬の多寡を決める、というようなことではありません。あたりまえの経済行為の対価として、ほとんどの設計者が自分自身でその建築の設計料をその都度きめているのです。
じつは、設計料は告示という法律(のようなもの)で一定の基準が決められてはいます。いわば公定価格です。しかし実際はほとんど有名無実です。ですから一部のハウスビルダーのように「設計料無料」といううたい文句が出たりします。とくに民間工事の場合は「設計料はそのつど相談」というのがほとんどなのです。
設計料はよく「建設費の何%」という言われ方をします。しかし、これもじつはそう簡単なハナシではないのです。何十億というビルと何千万円というビルが同じ比率の設計料というわけにはいきません。ふつうは、建設費が小さくなるほど、設計料の比\率は上がっていきます。また、工場と住宅とでは設計料の比率がかわります。同じ設計といっても仕事の内容がぜんぜん違うからです。
一方、設計料の根拠となる建設費。これもクセモノです。根拠となる建設費が当初の予算か、設計者の見積もった金額か、建設業者の請負金額か。それによって、またハナシが全くかわってくるからです。たとえば、最終請負金額が基準だとすれば、競争入札などでかなり無理をしてギリギリで落札されると、それだけで自動的に設計料が下がってしまいます。また、設計者が努力してできるだけ良心的経済的な設計をすればするほど設計料が下がっていく、という矛盾もでてきます。
ことほどさように、設計料というのは不確実でむつかしいものなのです。
一般には、設計料は高いと思われているようです。たしかに「もっと安く」は人の情ですが、建築はどこで買っても同じ、という既製品ではありません。そして、設計はそれをひとつひとつ丹念に創っていく作業です。ですから、安ければよい、というものでは決してない。むしろ安ければ、その内容を疑ってかかるほうがよいかもしれないのです。「どこより激安な医院」で喜んで診察してもらったり、「診察料はタダ、サービス満点病院」にすすんで入院しようという人は恐らくいないでしょう。それと同じです。
正直、設計者が本音で設計料を語ることは一種のタブーです。本当はお金のことは、あからさまに言わないのが賢明でしょう。しかし、設計料を語ることは、設計行為そのものを語ること。設計者として、自分の仕事を問うことです。そしてこれは、われわれが一般の人たちにもっと語って、もっと知ってもらわなければいけないことだと思うのです。
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