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あれやこれや住まいを考える


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  住宅の素材を考える-その六

これまで私は、注文主の方と一緒に一から住まいを考える形で、何軒かの住宅を設計してきました。
家族の年齢や構成もまちまちで、こんな家にしたいという要求はひとりひとりみな違います。
それをできるだけ高い次元で実現しようとするのが設計という仕事なのですが、何回やっても100%完全に要求に応えられた住宅は(他の設計者はどうかわかりませんが)実は1軒もありません。
なぜ100%にならないかという原因のひとつは、多くの注文主の方が現在の生活をイメージして要求を出されるのに対して、設計者は現在はもちろんですが、これからの家族や生活の変化にどれだけ耐えられ、長く愛される住まいを造ることができるのかを常に考えているという、そのギャップにあります。

例えば間取りの問題があります。
あまり現時点での生活イメージにはまったものを造りますと、ちょっと家族の関係が変化するだけで非常に使い勝手の悪い家になったりすることがあります。
ですから私は、間仕切り壁の一部を最初から造らず、必要になったときに簡単に壁を造ることができる仕掛けを用意しておいたり、逆に間仕切り壁が簡単に撤去できて、2部屋を1部屋に変えられるような仕組みを、注文主の今後の変化を予測して用意したりします。
このように変化に対応できるようにすることで、長く使ってもらえる住まいを造りたいと思っています。

では、素材についてはどうでしょうか?
私は、その素材が時と共にどのように変化していくのかということを知って、住まいづくりをすることも大切だと考えています。
前にも書きましたが、今の新建材は確かに見栄えがよく、出来上がった時には本当にきれいです。
でも、掃除を心がけていてもどんどん汚くなっていきます。
ビニルクロスなどは、拭けば拭くほど汚れが表面の凹凸の中に入り込み、取れなくなってしまいますね。
ところが、例えば杉のムク板などは、これとは反対に出来上がった時は赤みがかった部分と白い部分との対比が強すぎて違和感があるのですが、2〜3年経過しますと、赤味が弱まり白い部分は少し焼けて素晴らしい色合いに変化してきます。
その頃になってようやく部屋に落ち着いた雰囲気が醸し出されてくる訳です。
このような空間には飽きがきません。
年月が経てば経つほど古びてきますが、むしろ味わいを増してくるようになります。
家に対する愛着とは、このようなことを感じるところから生まれてくるのではないでしょうか。

自然素材には、健康的で人にやさしい住まいに役立つ能力はもちろんですが、時が経つほど味わいが出てきて住まいに対する愛着が深まるというように、人間の心をも変化させていく力を持っています。
私は、現在の住まいの大部分に欠けているのが、このような住まいに対する愛着だと考えています。身近なところにも様々な自然素材や自然素材から造り出された素朴な建材がたくさんあります。
桧や杉はもちろんですが、土壁、青石、瓦、しっくい、珪藻土、和紙なども、時と共に味わいを増す素材と言えるでしょう(最近このような味わいを「エイジングの美」として見直す動きが盛んになってきました)。
間取りや工法の工夫も含めて、このような魅力的な自然素材をうまく住まいに使うことで、長く住み手に愛される住宅を、私は造っていきたいと念じています。

(本田圭一/エディット・デザインワークス)

1 家族が触れあう住まい
2 自然の仕組みを利用する住まい-その壱

3

自然の仕組みを利用する住まい-その弐
4 自然の仕組みを利用する住まい-その参
5 太陽エネルギー利用を考える
6 住宅の素材を考える-その壱
7 住宅の素材を考える-その弐
8 住宅の素材を考える-その参
9 住宅の素材を考える-その四
10 住宅の素材を考える-その五
11 住宅の素材を考える-その六
12 住宅の構造を考える-その壱
13 住宅の構造を考える-その
14 バリアフリーの住宅-その壱
15 バリアフリーの住宅-その弐
16 バリアフリーの住宅-その参
17 バリアフリーの住宅-その四
18 バリアフリーの住宅-その五
19 バリアフリーの住宅-その六
20 バリアフリーの住宅-その七
21 生活の変化に対応する住まい
22 地域の景観に調和する住まい
23 様々な建て方が実現される住まい
24 ストックを活用する時代へ