モノづくりの理想の言い方として「最高の素材を世界各地から集めてきて作り上げました」などという表現をよく聞きます。
例えば、超高級料理などには頻繁に使われますね。
ですから、超高級な住宅を造るのであれば、世界各地から優れた素材を集めてきてもいいかなとも思うのですが、私が日頃設計しているのは一般的な普通の住まいがすべてで、当然できるだけ安くて良いものをという要求を満たすべく奮闘しているのが現状です。
また一方で、いくら超高級住宅であっても、徳島の雨の多い(湿気の高い)暖かな気候にすべての素材が合うとも思われません。
徳島の気候風土に合わせて、軒を出すとか、温い空気を屋根裏で抜いてやるなどの工法は前にご紹介しましたが、徳島で安くて良い素材で、かつ気候風土に合ったものはあるのでしょうか?
この素材には、ひとつは湿気が高いときには吸って湿度を下げてくれる働きが、また高い気温には断熱性能を持っていることが必要になります。
もちろん、普通の木造に使われている素材も多かれ少なかれこの性能は持っているのですが、特に高い性能を持っているのが、このコーナーにこれまでも何回か登場している杉なのです。
杉という木材には柔らかいこと、桧などに比べて少し強度が劣ることなどの問題点はありますが、これは使い方や材の太さを大きくするなどの方法である程度はカバーできます。
それより、杉にはこれら問題点を補って余りある大きな利点があるのです。
そのひとつが杉の呼吸量。
杉を顕微鏡で見るとたくさんの穴が開いた構造(これを多孔質と言います)をしています。
つまりすきまがたくさんあるということです。
湿度が高いとき、このたくさんのすきまに空気中の水分(湿気)を取り込むことができるわけです。
空気が乾燥しますと、反対に湿気を空気中に放出してくれます。
この働きは空気に触れる面から5mmくらいの深さまで及ぶと言われていますから、表裏両面を働かせようとすると、最低10mmの厚さの杉板があれば効果を発揮してくれることになりますね。
また、この多孔質という構造は優れた断熱性能を持っていることを示しています。自然の素材なのでばらつきがありますが、30mmの杉板には15〜20mmの厚さのポリスチレンフォームや50mmの厚さのグラスウールマットに近い性能があるとされています。
ですから、この杉の厚板と断熱材を組み合わせれば、より断熱に優れた住まいが可能になるのです。
このように、杉は徳島の気候風土に適した性能を持った素材と言えるのではないでしょうか。(もちろん、何もかも杉を使えばいいとは言いません。やはり適材適所の考え方は重要です。)
価格的にも杉は比較的安い材料です。徳島は人工林が多く、そのほとんどが杉の植林です。
戦後植えられた杉がもうそろそろ出荷に適した大きさに生長していますが、外材などに比べると少し高い目であるため、なかなか利用が進んでいません。
しかし、私が考えている住まいでは、杉をふんだんに使うかわりに他の職種を減らす工夫をして、ごく一般的な価格で提供できるのではないかと考えています。
さらに、杉が徳島にたくさんあるということは、コスト面だけでなく輸送にかかるエネルギーが少なくてすむことも意味しています。
その分、省エネルギーになるということですし、以前書いたようにリサイクルの観点からも理にかなっているのです。
徳島には杉だけではなく、竹や瓦、和紙、青石など、たくさんの建築素材があります。
私は、このような身近にあり、徳島に合った素材を使う工夫をしていきたいと考えています。
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