はっきり言って私の書く文章には、頻繁に「昔の家では・・・」という言い回しが出てきて、今は昔と違うぞ!というお叱りの声も聞こえてきそうです。
分かっているのですが、どうしても現代の住まいに対する疑問から住まいの有り様を発想しているものですから・・・。
と同時に、昔の住まいにはこれからの私たちの住まいを考える上で大事なことが、まだまだ隠されていることも事実なのです。
それで、またまたこの言い方から始めてしまいますが、昔の家は自然界に存在する本物の素材のみを使って造られていました。
ひるがえって、現代の住まいはどうでしょう。
ビニルクロスのように石油などからつくり出した素材は、誰が見ても人工的なものだと感じるでしょうが、これは自然素材だと信じて疑わない素材の中にも、自然の素材とは言えないものが多く出回っています。
一例を挙げてみましょう。
洋室に使われるポピュラーな床材で、フローリングと呼ばれる材料がありますね。
中でも、住宅機器の発達で床暖房が使われることが多くなり、これに使えるフローリングが販売されています。
このフローリング、ナラとかブナといった木を使って造られていますが、いくら乾燥した木でも床暖房の熱を受ければやはり反ったり曲がったりします。
それで、高温高圧のタンクの中で樹脂を木に浸透させ、細胞中の水分を全部樹脂に置き換えてしまいます。
つまり細胞の中ひとつひとつから樹脂で固めてしまうわけです。でもこれって、木と呼んでいいのでしょうか?
見た目や肌触りは確かに木ですが、樹脂の板と言ってしまっても差し支えないのでは・・・。
そこにはもはや、木の持つ柔らかな感触や吸湿性という特徴は完全になくなっています。
熱による変形を防ぐために、木の持つ本来の良さが損なわれたのです。
このように、自然の素材同士、そうでないもの同士、そうでないものと自然素材同士、さまざまに組み合わされて造られる材料を複合材料と呼んでいます。
この複合材料というもの、もとの単一の素材に分別することが難しいため、当然ながらリサイクルできません。
では、燃やして灰にして大地に帰すことができるかというと、これも不可能です。樹脂で固められたフローリングは、燃焼により有毒な成分が出てきますから、結局は産業廃棄物として埋め立てて処分するしかない建材だと言ってもいいでしょう。
こんな問題があるのに、どんどん新しい複合材料が産み出されています。
それは例に挙げたように、目的とする面での性能を高めることができるためです。
しかし、リサイクルもできず、大地に帰すこともできません。
私はこれからの地球環境を考えて、できるだけ再生可能な材料で住まいを造っていきたいと思っていますから、複合材料を使うということもできるだけ避けたいのです。
しかし、現時点ではなかなかこれをゼロにすることができません。
これをゼロにしていくためには、住まいの住み手、つまりみなさんの住まいに対する意識を変えていただく必要があるのです。
今、住まいを造る側の人間にとって一番気になることは、オーナーからのクレームです。
重要な部分での欠陥が無いような丁寧な設計や施工をしていても、例えばモノとモノとの境目にすき間が空いているというクレームはよく出ます。
これまでにも私は、人や環境にやさしい県産材の杉をムク材のまま、さまざまな部分に使ってきました。
この杉は生きていて、空気中の湿気を吸ったりはいたりする自然の調湿作用を持っていますが、この作用は、杉材そのものの伸縮をともないます。
つまりは反り狂いがどうしても多少は起こるということですから、すき間が空いたり、割れが生じたりするのです。
また、杉はどちらかというと表面が柔らかい素材ですから、ちょっと何かをぶつけたり摺ったりするだけで傷が付きやすい欠点もありますが、逆に、子供や高齢者が転んだりしたとき、身体に与えるダメージを少なくする安全面での効果にもつながっています。
結局は、みなさんが住まいというものに何を求めているかということで、住まいの形は変わってきます。
絶対にすき間の空かない、傷の付きにくい床を求めれば、樹脂で固めたフローリングを使わざるを得ないのです。
でも、健康で人にやさしく、安全な床材が欲しいとなれば、多少すき間が空くなどという欠点は気にならなくなるはずです。
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